トヨタの8気筒セダン、セルシオ。試乗レポートです。
比較と辛口評価の試乗レポート
筆者は前期型A仕様と後期型Bユーロの2台、友人と共同所有のように使用していました。違いや比較を含めお届けします。
同格のライバルとして比較できる車種が難しいので、このような形になります。
「20後期」は中古車にて購入状態からローダウンバネが付いていたのでその状態でのレポートとなります。
今回、レポートの中心となるセルシオ2台、古いクルマなのでコンディションは新車と全く違い、多少改造もしてあるので、まずはクルマの状態から。
20前期のボディデザインは、10系セルシオとほとんど変わらないデザインでデビューしました。細部は贅肉を落としてバランスを取ったといっても、セルシオオーナーでも間違えるほどそっくり。10系の方が優雅で高級感高い事もあり、「どっちが新型なの?」なんて。
こんな20系セルシオですが、後期へのビッグマイナーチェンジは気合いが入ってました。
ボディ外板ではボンネット、フェンダー、バンパー、ライト、グリルが変更され、リアのテールライトは高さ方向に「2mm」小さく。それによってトランクリッドも"わずかに"変更されています。
気合いの入ったビッグマイナーチェンジですね。
見た目の印象は大きく変わり、優雅な高級路線よりスタイリッシュさ、そしてパーソナル感を感じられるように。
フロントの重厚感や高級感は多少失われましたが、セルシオのドライバーズセダンとしての印象は強まったと思います。後期の方が単純にかっこいい、という意見が大多数。
ドライバーズセダンとして最も重要な、クルマの本質となる部分についても、大きな変更が施されました。ミッションは4ATから当時最新の5ATに変更。エンジンもより高回転が元気なタイプになり、加速力もパワーアップ。
装備面も充実しました。ポジション記憶機能(マイコンプリセットドライビングシステム)が付き、パワーシートはヘッドレストも操作可能。
エアバッグにはサイドエアバッグも追加され、トラクションコントロールは横滑り防止装置(VSC)&ブレーキアシストにパワーアップ。
また純正カーナビゲーションはワイド画面タイプに変更になっています。
インパネもドアトリムもコンソールも、デザインは非常にノーブル。普遍的で上質です。
「あるべきところにあるべきものがある」、初めてでも違和感なく馴染めると思います。そして質が高い。ジャンクフードではない本格的な料理に通じるデザインです。
デザインはベーシックですが、高級感は高いです。シートの大きさ、センターコンソールの幅広さ。大きくてサイズ的な高級感があります。
また助手席が遠いというのも非常にラク。セルシオに限らず重要なところです。
質感は素晴らしいものがあります。インパネやドア内張、ピラー、あちこちで非常に厚みのある軟質パネルが使用されています。柔らかく傷も付きにくい良質な素材が使用されていることが想像できます。
また木目パネルは厚みのあるクリアコーティングがされ、立派なだけでなく、お掃除も簡単。傷が目立ったらいくらでも磨けます。
またフロアカーペットは吸音・防音材の厚みがすごく、場所によっては10cmの厚み!カーペットめくれば感動します。
リアシートは足下のスペースはあまり広くはありません。後から登場するマークXと同じくらいです。しかし着座姿勢はゴージャス。シートの厚みも厚く、シートバックも寝ていて非常に快適。
単純なスペースではない部分、質の高さに優れ、その面から長時間ドライブがラクです。
スペースに関しては日産シーマも同様な感じで、メルセデスベンツSクラスと比較すると広さでは劣る印象です。
本革シートの表地の質感では、セルシオだってもちろん良いんだけど、シーマやSクラスの方が立派です。耐久性ではわかりません。
セルシオ20後期になっての内装部分での変更点は、エアバッグの充実、シートポジションメモリーの充実、メーターパネル内に液晶表示部分の追加がされています。
メーター内の液晶部分には「半ドア警告」や「テールライトの球切れ」などが表示されます。走行中は「平均燃費」や「瞬間燃費」が表示されます。
試乗レポートです。内容は20セルシオ前期のレポートと大方共通です。
純正状態のサスペンションの場合、乗り心地はフワフワです。これは後期型のダウンサスが付いている方のセルシオでもキャラクターは一緒。古いのでショックがヘタっています。
前期型の単筒式ショックアブソーバーの車高調では、乗り心地は非常に良く、減衰力をそこそこに締め上げれば質感も十分。
よく作られたボディによく動くショックアブソーバー。クルマを運転するのが楽しくなります。
固めのバネでも乗り心地すこぶるよく、段差も気にならず、荒れた路面もなんのその。ガタガタを走る事自体が快適に感じます!
内装内張がミシミシいうこともなし。細かなボコボコはボディやシート、ゴムブッシュがシャットアウトしてくれます。
本革シートはハンドル切った状態で段差を越えればリアシートからガサガサいいます。ボディがねじれてる感じが伝わります。ボディの柔軟性とも言えます。他車で確認しても皆一緒なので、劣化ではなく正常だと思います。
静粛性は凄いです。6気筒エンジン搭載車クラスからしても1段以上レベルが上。窓閉めていると、救急車の音が聞こえない事が多々あります。
なんで静かなのか?そりゃボディも内装もエンジンも、設計いいんでしょう。しかしバラしてみてわかるのはかなりの物量作戦。
機密性の徹底やこれでもかってほどの厚いフロアカーペット。内装だってボルトの数が違うし太さも違う。固定ピンだってノイズが出にくいタイプを数多く仕様。ノイズが響かないような部分にもしっかり、物量を投入しています。
流石腐ってもセルシオ。乗り心地がいいのは当然。静粛性が高いのも当然。あえて記事にするほどのことでもありません。
注目して頂きたいのは、アクセルもブレーキもフィーリング良く、扱いやすい。コーナーリングも得意と言える質の高い感覚。コーナーで遅いクルマではありませんから、舐めてかかると後悔しますw
ステアリングはロックトゥロックが大きく、操作量は多いのですが、適切な量を切れば正確に、機敏に、反応します。フロントの重さを感じるのは最小限。
タイヤが不安定な状態でも、安定感高く、接地感の高さは他車では味わえないレベルです。
※後期型からは横滑り防止装置が装備されます。アクティブに走る場合は解除が必要です。
意図的にリアタイヤをホイールスピンさせた場合、雨の日は横を向いてしまいますが、動きはゆっくり。カウンターを当てて、戻してと、落ち着いて操作できます。
トラクションコントロールが介入しますがホイールスピンはしたままという、ドライバー優先でスポーティカーみたいな味付けです。
トラコンはほんと絶妙な介入で、タイヤが空転してもオーバーレブする危険だけを防いでくれる機能。レッドゾーン直前で止まってくれます。
こうした動きは、ボディへの入力が強い時でも、アライメント変化が少なくタイヤの接地面がしっかりしている印象です。想像ですが、足回りパーツの剛性が高いのかもしれません。
ここでレポートしている試乗車、セルシオ20後期には中古にて購入時からダウンサス+純正ショックの状態でした。
新車から7年落ちにもなれば、流石にセルシオといえどもちろんショックはへたってます。
この状態の純正ショックアブソーバーにダウンサスを組み合わせると、フカフカのフワフワ。
リアシートに座り、ゆっくり走っている時は特別問題もなく十分快適ですが、セルシオらしいかといわれればちょっと何か違う...車酔い誘発。
これで走ると、せっかくのBユーロというグレードが残念でしかたありません。クラウンに近い安っぽさと表現したらわかりやすいでしょうか?これならエアサスの方がセルシオらしい感じです。
※ダウンサスのブランド、内容は不明。
一方、ブリジストンのタイヤ、レグノは大当たり。値段が高いだけあって、ミドルクラスセダンや背の高いクルマでもそれなりの効果を感じられるレグノ。
セルシオならよりハッキリした効果とマッチングの良さを感じられます。ビッグセダンとレグノの組み合わせはピッタリと感じます。
乗り心地、特に当たりの柔らかさという点は他のタイヤと全然違います。レグノも2000ccクラスで使用すれば、とっても固いタイヤで、これってスポーティタイヤじゃん!なんて感じるほどですが、セルシオクラスだと違います。欠点が消えて長所が際立つ印象。
素早くハンドルを切っても、ブレーキしながらハンドルを切っても、腰砕けに感じることがなく、非常にいいです。エコタイヤや外国製タイヤだとビッグセダンの良さが多少なりとも失われてしまうかもしれません。
(輸入タイヤはセルシオ所有時に試すことはできませんでした)
セルシオのエンジンはトヨタご自慢の8気筒エンジン。例えエンジンブッシュが切れていようがアイドリング時の振動は全く気にならず、音も静か。そして上質。
振動無くスムーズなこのエンジン、フィーリングを言葉で伝えるのは難しいです。音は言葉で表すと、低回転ではシュイーン。高回転ではジュワイーンにキーンという音が混ざった感じ。そして後期のエンジンでは元気で勢いのあるビュワーという音が混じります。
低回転では、どこか遠くの方でフーンという感じでエンジン音が鳴っています。
ビッグマイナーを経て、後期型ではエンジンは可変バルタイ機構が付いて進化しています。高回転の回り方が変わっています。
アクセル全開にすれば、150km/hまで加速感は衰えず。そこからメーター読み180km/hまでも問題なく加速。巡航に入れば、ドライバーが涼しい顔して高速走行でき、パッセンジャーは速度感低く快適。
この後期なら直線道路でGT-Rとアクセル踏みっぱなし勝負になってもなってもいい勝負が出来ます。先に加速を始めた方の勝ち、といった感じです。
また後期型ではミッションは4ATが5ATになりました。ミッションの多段化により、ワインディングでの走りやすさは劇的に向上しています。
ギヤ比が詰まることでシフトアップ時のドロップ回転数が少なくなり、シフトアップ時の不安感も減りました。2速ホールドから3速ホールドのポジションを繰り返す峠道での扱いやすさは間違いなくレベルアップ。
速いと言われる排気量の小さなターボ(2000ccクラス)は、速度が低い時には確かに速いのですが、速度が上がると加速感は鈍ります。排気量の大きいセルシオなら3速に入っても同じように加速してくれます。
3000ccターボクラスのエンジンだと簡単なブーストアップでセルシオより速くなります。単純な速さならベストな選択肢かもしれません。
中古で買う場合、トラブルは覚悟した方がいいかもしれません。如何にセルシオといえど故障は運次第。筆者が所有していた間に起きた故障です
後期のクルマはタイミングベルトがきれました。そのときのオドメーターが示す数値はちょうど10万キロ。距離戻してないかって疑いたくなります。
前期の方は速度メーターが動かなくなりました。(叩くと直ったりします)。自発光の照明全体が点灯しない事も。昼間でも見えません。最終的には水温計も上がらなくなった。
また、ラジエターファンのオイル交換、パワーステアリングフルードの交換。フィーリングキープに非常に重要な部分。特にパワステフルードを交換すると、機能は体感できるほど復活。コーナーでワンテンポ遅れるようなフィーリングがなくなり、グラグラせず、走りやすさと楽しさは最高。
まめな交換でオイル漏れトラブルを防ぐことが出来ます。(20セルシオの持病)。
そのほか効果のあったメンテナンスは、エンジンマウントの交換。前期はそのまま、後期のみエンジンマウントを交換したので違いはよくわかりました。2台のボンネットを開けてエンジンを吹かしてみれば視覚的にもその違いがわかります。マウントがダメだと、エンジンが大きく揺れます。
ただしセルシオの場合、エンジンマウントが切れたからといって、極端に振動が大きくなったり、アクセル操作がシビアになるということはありませんでした。
ブレーキフィーリングの悪化、これはペダルが奥に入る量が増え、剛性感が減りました。初期でカクッと効き過ぎないのは良いんですが、できれば踏み力でコントロールしたい訳です。
ブレーキマスターシリンダーのオーバーホールとキャリパーのオーバーホール両方行いましたが、劇的には改善せず。
セルシオの燃費は、そんなに悪いわけではないです。前期で6〜8km/L、後期ならプラス1km/Lが期待できます。
セルシオの新車販売当時、2000ccクラスで10km/L程度の燃費が当たり前でした。それを考えれば、内容を考えれば許容範囲内かと思いますが如何でしょ?走行距離の少ない方ならガソリン代は月に1000円くらいの差ですか。
自動車税も、排気量2500ccにプラスして3万円。車検の時にかかる金額も大差ありません。トラブルでの修理を除けば、維持費は思うほど高くありません。
セルシオのモデル別の違いや比較
その他の概要はリンク先で掲載中。
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