ホンダきってのスポーティカーS2000(AP1)。多くの部分が専用設計という量販自動車の域を超えたクルマです。
比較と辛口評価の試乗レポート
ホンダの創立50周年を記念して作られたオープン2シーターで純粋なるスポーツカーといってもいいほど。そんなS2000の試乗レビューです。
排気量2000cc、コンパクトなボディサイズ、2シーター。そして価格は350万円以上とけっこうな高額車。価格だけ見れば尻込みしてしまいそうです。
しかしです。兄弟車やOEM車だって多い中、各部ほとんど専用設計というS2000には、ホンダの意気込みと熱意を感じます。
ホンダの本気がすごいのは御存知の通り。他にない個性と魅力を持っていればそれがプレミアム。
S2000に試乗すると、これは他のどんなクルマとも違う、そんな感じが全身から伝わってきます。スポーティカーではなくスポーツカーというイメージ。スープラ、RX-7、フェアレディZ、シルビア、プレリュード、それらクーペの形をした乗用車って思っちゃいます。S2000と比較すればね。
S2000はクルマというより、カートやチューニングしたマシンのフィーリング。知る中で最も似ているクルマといえば、マツダAZ-1かなぁ。AZ-1もタイトで味の濃い乗り味でした。でもAZ-1は軽自動車。S2000とは次元が違います。
S2000はソリッドでダイレクトな味付けであるにも関わらず、あちこちがガチャガチャいうような部分は最小限。これは走行1万キロのクルマでも5万キロのクルマに試乗しても一緒。
ソリッドでダイレクトでも、パワーはそこそこ。速いのは瞬間です。なので一般道のクネクネ道だったらシャシー&タイヤに余裕で、全開で走りやすいです。
バイクに例えると、250ccのレーサーレプリカを連想します。
外観のデザインはシンプルでクリーン、言葉変えれば地味というか素っ気ないです。
しかしボディ塗装はすばらしく、3コートの特別塗装は職人がオールペンして丁寧に磨いたような深みがあり、思わずうっとり。
大事なことは、S2000にとってボディデザインは2の次3の次。きっとホンダもそう考えているはず。だって、乗ればドラマチックですから。
内装は、シートの出来は良く、座り心地は上々。サイズも小さくはありません。マツダ・ロードスターなどとは違い、大人の趣味で乗れるクルマをここで実感します。大人でなければ所有できないプレミアム。
しかしそういうには、インパネデザインが平凡すぎて残念。質感は2000ccクラスとして考えれば納得です。
オープントップには自動で。2つのストッパーを外してボタンを押すだけでオープンになります。ちなみに室内の収納やトランクスペースは、ないに等しいです。
シートに関して、本皮とフェイク皮のコンビみたいなのが用意されますが、手触り良く、ホールド性も悪くなく、バランス良いです。よくある本皮シートのようにツルツル滑って困るということはありません。
外装のデザインはあまりにもプレーン、そっけないわけですが、ソフトトップは色の違うモノに張り替えが可能。アフターパーツでいろいろ出ています。
張り替え工賃は10万円くらい。実際に千葉県のお店にて交換しました。外観のイメージは相当変わります。
S2000の操縦性は、驚くことばかりです。試乗すると、楽に運転することをゆるしてはくれません。
これはゆっくり走っていても一緒。クラッチはショートストローク、ブレーキは踏み圧に正確に反応し、インフォーメーションはペダルから、シートから、ステアリングから、常に体に伝わってきます。
エンジンはチューンド「F20C」ということで、低回転は普通の2000ccよりもっさりなトルク感ですが、5千回転からレッドゾーンの9千回転まではそれなりにパワフル。そして、加速力はそれなりでもレスポンスとサウンドはしびれます。キープして走ると脳汁出まくりです。
そんなに速くはないけど、注意してないとレッドゾーンに入ってしまいそう。これぞ高回転型エンジンの醍醐味。シフトアップの際は余裕もって神経集中してどうぞ。8500回転くらいでアクセルゆるめ始めてトルクを抜いて。
クラッチ切るタイミングずれるとスパッとレッドゾーンに飛び込みます。
高回転でのレスポンスは最高で、アクセル踏み直しても軽く敏感にふけ上がり、微妙なアクセルワークにもしっかり答えてくれます。
エンジンノイズも4気筒最高いってもいいかもしれない音質。これだけ回るのに高回転での振動も気にならず、もう少しで6気筒の質感になれそうな4気筒エンジンです。
しかしさすがにエンジンのパワー不足はS2000の弱点で、後期から排気量アップしてます。一般道で走る場合、いつでも全開で回してるわけではないですから、良さがわかりにくいんですよね。
エンジン同様、ハンドリングも異次元なのが速度を上げなくてもわかります。
クイックなステアリングギヤ比に、ヨーの立ち上がりも速く、それに追従するサスペンション。出口も遊びがなくダイレクト。攻め込まなくても、飛ばせなくても、すごく楽しい。
S2000はあちこちダイレクト感強いのが特徴。ボディ固く、純正サスも固い。ボディが軽いために多少ドタバタするけど、それでもボディはかっちり。
ミッションも剛性感高く、カッチリかつ回転を合わした瞬間にスコッと優しく入る。エンジンは鬼のレスポンスでアクセルにピタッとシンクロし、ブレーキも踏んだ分だけ効く。ピッチングも適正な量だけ感じられるので走りやすい。
要するにS2000は、ドライバーの為だけにいい部分がある、くるまです。隣に乗っている彼女や奥様にはごめんなさいですね。
S2000の乗り心地は、良くはありません。クルマのキャラクター通りにサスペンションも当然固めのセッティング。そしてボディも剛性があるとすれば乗り心地は固くなっていきます。
そのおかげでリアリティあってクイックなハンドリングがあるわけだと思いますが、高速道路の継ぎ目などはダイレクト。ちょっと大げさにいえばリジットサスのようにも感じられます。
矛盾しますが、”オープンカー”S2000のサスは固くても不快感は最小限。そう、オープンカーとしてはとってもマトモなレベルで安心。300〜400万円級のクローズドクーペと比較すれば乗り心地は荒っぽい固さ。キャラクターが違うということですね。
S2000は生産開始から生産中止まで、全世界で11万台も販売されたということです。この特殊なクルマがこれだけ売れたというのは、ホンダという自動車メーカーのイメージ含め、やはりいいクルマだったのでしょう。これだけで全てが想像できます。一定レベルの評価はされたのではないかと。
S2000を中古で購入するとなると、古くても高い。とても割高なクルマです。
しかし国産車には他に競合するようなクルマがありません。欲しければ仕方なしという感じですか。
S2000は趣味性の高いクルマなので、ここは価格は気にせず、思い切って買ってしまうのが一番。試乗もせずに割高なクルマを買うのは不安かもしれませんが、全体的な相場が割高。だから、最悪失敗してもタイミングさえ逃さなければ、それなりに高値で手放すことが出来ると思います。
マイナーチェンジでエンジン排気量が2200ccに拡大されたモデルが発売されました。ホンダはなんで2000ccにこだわるのか?と思っていた筆者にはビッグニュース。
試乗してみると、中回転までがしっかり強化されています。今まではパワーバンドの6000回転くらいから下、低〜中回転がとてもかったるく、たとえ2速でも、タコメーターを見ながらタバコに火を付けて、灰を払って、やっと加速体制に入ってくれる。そんな感じでした。VTECだから低回転トルクもある、そんなのはS2000には通じません。なんだかんだいって速いのはトップエンドの6000〜8500回転の間だけ。
とまあ、こんな感じでパワーバンドに入るまでの時間がかかっていたのが、2200ccではだるさが無くなっています。まだまだ踏めば踏んだだけ、とは言えませんが、体感上ではずいぶんな差があります。その場で2台乗り換えて比較しなければわからないほど小さな差じゃないんです。
その他、乗り心地に関してはこちらも悪いまま。マイナーチェンジしかも車両重量が増した点において、若干なりともよくはなっているのかもしれませんが、クルマの個体差によってかき消されてしまう程度の差のようです。
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タイプSのシフトノブ。純正では珍しい球状タイプ。
フットレストが立派なサイズ。ブレーキペダルを踏み外すと足がペダルの後ろに潜ってしまう場合もあるから注意。筆者は外車から乗り換えた直後の急ブレーキで経験がある。
違いを感じる練習、試し失敗した経験、一貫性ある運転で試乗レポート。
受け売りでなく、カタログ的でない。紹介ではなくレビューです。
評論家さまとの違いは、率直な表現と自由度の高さ。辛口といえば辛口です。
評価評論・比較レビュー「間違いいっぱいの自動車選び」。